東方我楽多叢誌(とうほうがらくたそうし)は、世界有数の「同人」たちがあふれる東方Projectについて発信するメディアです。原作者であるZUNさんをはじめとした、作家たち、作品たち、そしてそれらをとりまく文化の姿そのものを取り上げ、世界に向けて誇らしく発信することで、東方Projectのみならず「同人文化」そのものをさらに刺激する媒体を目指し、創刊いたします。

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コラム
2022/06/16

東方原作を振り返る『東方花映塚 ~ Phantasmagoria of Flower View.』

東方原作を振り返る『東方花映塚 ~ Phantasmagoria of Flower View.』

 2005年8月、同人サークル・上海アリス幻樂団から東方Project第9作目『東方花映塚 ~ Phantasmagoria of Flower View.』(以下:花映塚)が頒布されました。

東方花映塚 ~ Phantasmagoria of Flower View. | 上海アリス幻樂団

 本作は、幻想郷で四季折々の花が咲き乱れる異変を背景に、霊夢たちが異変の真相に迫るストーリーとなっています。

 当時の頒布から17年後の現在、花映塚はPCゲームダウンロードプラットフォーム「Steam」にて配信されました。

東方花映塚 ~ Phantasmagoria of Flower View. | Steam

17年前もの作品となると、対戦型シューティングゲーム(以下:STG)という特殊な形式も相まって、馴染みの薄いユーザーも少なくないでしょう。そこで、Steam配信を機に、花映塚がどのような作品なのか振り返ってみましょう。

 

弾幕を打ち消し、弾幕を送りこめ

 花映塚が通常の東方作品と異なる点。それは、このゲームが対戦型STGであることです。

 この”対戦型”という形式は、東方では初めてのものではありませんでした。『東方紅魔郷』より以前の、いわゆる”旧作”と呼称される作品群のひとつ、『東方夢時空』もまた、花映塚と同様の対戦型STGです。さらに源流を遡れば、これらは『ティンクルスタースプライツ』という作品のゲームシステムを踏襲したものとなっています。

 通常のSTGが、敵の放つ弾を避け、ショットを撃ち込んで撃破する形式なら、対戦型STGは「対戦相手に弾を送りこむ」形式です。画面は自身が操作するキャラクター側と、対戦相手の画面に分かれています。

Steamより引用

 対戦といっても、対戦相手を直接攻撃できるわけではありません。

 プレイヤーが行うのは、自身の画面に放たれる弾幕を打ち消すことで、対戦相手の画面に弾幕を送り込み、先に対戦相手の体力を削りきることです。

 画面内には、ショットで撃破することで弾幕を巻き込んで打ち消せる妖精や幽霊が出現します。これらを上手く倒すことで、効率よく弾幕を消すことが可能です。

 また、通常のショットより強力で、かつ2段階目から弾幕を消す効果もあるチャージショットや、キャラクターごとの個性豊かなエクストラアタック・ボスアタックといった攻撃手段も豊富です。

Steamより引用

 

⑨の発祥や、花映塚発のキャラクターについて

・⑨の由来

 花映塚にもキャラクターとして登場しているチルノ。多くのファンから愛されている彼女ですが、愛称”⑨”の元ネタは花映塚が発祥となっています。

 これは、上海アリス幻樂団の作品ページ内で公開されていたオンラインマニュアル(現在はリンク切れのためか確認できず)に、ゲーム画面の各システムなどを説明する画像がありました。

 ③がライフ、⑤がチャージゲージといったように数字付きで説明が続き、最後の9番目、画面内のチルノに矢印が引かれ、そこには「9.バカ」の一言が。これ以降、チルノ=バカ=⑨という愛称が定着することとなります。元ネタはZUN氏の遊び心が由来となっています。

追記:

オンラインマニュアルにつきましては、Steamのマニュアルページ、およびインストールした花映塚のフォルダ内に含まれるhtmlファイルから参照可能となっています。

 

・花映塚で登場したキャラクターたち

 本作のボスキャラクターを務める地獄の裁判長、四季映姫・ヤマザナドゥや、彼女の部下である死神・小野塚小町を始め、人形解放を掲げるメディスン・メランコリーといった面々が、花映塚で新たに登場しました。

 また、『東方文花帖』や『東方風神録』などの作品でも活躍を見せることとなる烏天狗の新聞記者・射命丸文も、ゲームとしての初出演が花映塚となっています。加えて、旧作との直接的な関連は描かれていませんが、花を操る妖怪・風見幽香も、イメージを刷新して登場しています。

 

・ライトノベルの題材に

 ゲーム本編からは逸れた話題となりますが、2013年には、ゲームをテーマとしたライトノベル『僕と彼女のゲーム戦争』5巻において、花映塚が題材として扱われました。

『僕と彼女のゲーム戦争』5巻表紙にも、霊夢の姿に扮したヒロインの姿が描かれている。
株式会社KADOKAWAより引用

 作中では、C2やEXアタック、6強(※)といった専門用語も見られ、ゲームの特徴が事細かに描写されています。

※6強

キャラクター性能で上位とされる6名。
当時の時点では、霊夢、魔理沙、小町、映姫、リリカ、妖夢が該当するとされている。

 作者である師走トオル氏のブログでは、上海アリス幻樂団の協力についての謝辞が綴られています。当時としては、こうしたコラボ的な動きもまだ多くはなく、注目を集めることとなりました。

僕と彼女のゲーム戦争5 | 株式会社KADOKAWA

 

17年越しの弾幕対戦

 花映塚は対戦ゲームとして、多くのユーザーに親しまれています。国内外で対戦コミュニティが立ち上がり、キャラクターの研究などが有志の手によって行われ、攻略同人誌も作成されました。

【花映塚攻略本】DEHANA | BOOTH

 Steamでの配信に際しては、Steamが提供しているマルチプレイ機能「Steam Remote Play Together」を用いた対戦方法が案内されています。

 また、対戦方法の導入については有志による解説記事などもありますので、気になった方は調べてみてください。

Steam Remote Play Togetherを利用したインターネット対戦について | Steam

【東方花映塚】Remote Play Togetherによるネット対戦について【steam版】

 頒布から17年経った今でも、なお色褪せない魅力を持つ花映塚。対戦STGだからこそのプレイ体験を、ぜひ味わってください。

東方花映塚 ~ Phantasmagoria of Flower View. | Steam

 

お知らせ

 7月9日に放送される、次回の東方ステーションは花映塚特集となります。

 ゲストを招いての対戦の様子なども放送しますので、ぜひご視聴ください。番組でも、花映塚の魅力を発信します。

東方原作を振り返る『東方花映塚 ~ Phantasmagoria of Flower View.』 おわり