リポート
2020/10/22

「“非日常”を取り戻せ!!」東方Projectアレンジ配信ライブ『Grazy Crazy!!』ライブレポート ―― 前半戦

『Grazy Crazy!!』ライブレポート ―― 前半戦

 皆さんは、7月に東方アレンジの世界を揺るがすライブがあったことをご存知だろうか? ひとつじゃない、ふたつあった。

 7月4日に開催された『FroweringNight2020』。7年振りの復活。そして、これまでの歴史の中で初めての「無観客生配信ライブ」。あのアツい一夜のことを、今でも鮮明に思い描ける東方ライブフリークは少なくないだろう。もしまだ見ていない人は、アーカイブ映像が現在も残されている。ぜひ見てほしい。

 東方ライブフリークの心を掴んで揺さぶって離さなかったのは、このライブだけではない。7月にはもうひとつライブがあった。

 『Grazy Crazy!!』。7月23日に開催されたその配信ライブは、間違いなく東方アレンジの世界を揺さぶった。馬鹿デカい声で世界に向かってシャウトした、「フラワリだけじゃないんだぞ」と。

 出演は、味玉定食・少女理論観測所・少年ヴィヴィッド・モジャン棒。どのサークルも東方バンドアレンジの世界で名を馳せ続ける、若き雄たち。突然世界が“ライブができない世界線”に変わってしまって、彼らのフラストレーションはどれほどだっただろうか。彼らが、ようやく世界に向けてエネルギーを発射できるとなったときの、その熱が想像できるだろうか。

 そしてこのイベントをまとめる主催は、『FroweringNight2020』に出演していた「石鹸屋」のドラマー・hellnianだ。彼がこのライブを「フラワリ」の直後に開く意味について、自分のバンドは出演せずあえて裏方として彼らに配信ライブという場を与えたこと。このライブの告知を最初に見たとき、ぼくはそのことばかりで頭がいっぱいになってしまった。

 そんなライブ、文脈だけでお腹いっぱいになってしまうライブ、行われるだけでも意味を持ってしまうそのライブは、単純に配信ライブとしても非常にクオリティが高いものだった。音も、映像も、構成も、熱量も、間違いなくこれまで行われた東方ライブ配信の中でもトップレベルと言っていいほどのものだった。7月にそんな東方ライブがあったということを残すために、なんなら、見れなかった人を最大限まで「死んでも悔しがらせ」るために、この『Grazy Crazy!!』ライブレポートを2日間に渡ってお送りする。

 

久々のライブに弦すらもちぎれるパワー ―― モジャン棒

 フラワリが「これまで」の東方アレンジバンドシーンをこれからもやる場だとしたら、このイベントに出てくるバンドは「これから」のバンド達だ。

 hellnianの挨拶のあと、1バンド目で出てきたのはモジャン棒。「ヨーオッ!」という掛け声とともに疾走感のある「転落ゲエム」でステージを開始する。

 目を引くのはタンバリンをネックレスのごとく首にかけたモジャン棒代表・田中じゅんじろーのスタイルと、どこか見覚えのあるドラマー。

 実はメンバーの職場でCOVID-19感染者が出てしまったため、ピンチヒッターとして主催のhellnianさんが急遽ドラムに入ったのだ。とても1週間前に決まったとは思えない仕上がり具合なのはさすがだ。

 配信が始まってすぐに気がついたのは、細かくカメラを切り替えてメンバー全員が映るように準備された、気合の入ったスイッチングだ。いったい何台のカメラを使っているのか、ミュージックビデオと見紛うほどさまざまな角度からバンドの演奏を映し出している。

 もちろん、台数だけではなくちゃんとコーラスの入るフレーズや、じゃねっと(Gt.)がソロのタイミングでは的確に演者を抜いた映像を出している。ただ多くのカメラを準備するだけではなくリハで入念な準備をしたことが伺える。配信ライブと決まった瞬間から、配信ならではの工夫をしっかりと考えていたのだろう。

 1曲目を終えて、休みなく「終日クロックワークス」「劇的エイローネイア」とアッパーな曲を続けていくモジャン棒。普段のライブならば緩急もセットリストの要素になるが、勢いのある曲を頭から続けて出していける配信ライブのメリットを存分に活かす選曲だということをよくわかっている。

 観客がへばってしまうセットリストも配信なら自由自在……だがやはり、パワーのある曲を続けると流石に疲れるらしい(後のMCでそう話していた)。

 しかし、曲のチョイス以外にも、画面越しに映る表情や彼らの動きからは並々ならぬ熱量を感じる。もちろんパワーのあるサウンドとボーカルが持ち味のバンドということもあるが、昨今の事情で発表の場を奪われ続けたフラストレーションを存分にぶつけていることもあって、”非日常感”がマシマシだ。

 MC後は、“モジャンガール”がボーカルの曲をスタート。ティアオイエツォンを原曲にした「双尾ステップ」は跳ね回るような曲調と、ボーカルの追加で一気に賑やかになったステージで画面狭しとパフォーマンスを見せつけ、場をどんどん温める。

 この曲の途中、あまりのパワフルさに弦が切れてしまう。「弦をお持ちのお客様ー!!!!お客様いないんでしたーーー!」と、予定外であろう間をもたせる時間がスタート。楽器隊が各自アドリブ演奏で場をつなぐのだが、非常にスムーズで最初からこの予定があったように思えるほど。

 トラブル明けの曲は「上海ランデブー」。曲名の通り上海紅茶館のアレンジで、観客も煽る仕草もしっかりカメラが映し出しており、現実のライブDVDを見ているかのような会場の盛り上がりを感じられた。

 ラストの曲はサークル代表・田中じゅんじろーのボーカルに戻って「刹那コミュニケヰション」。刃物のような音の鋭さを持った東方妖々夢のアレンジに、不意の緩急を合わせて緊張感のある音を奏でている。また会おうという歌詞を含んだ曲を選んだのは、直前のMCでの「また客ありのライブができる日に」という思いも重なっているのだろうか。この日一番のテンションに見えた。

 ひとつ余談だが、この日のGrazyCrazy、配信の転換中に流れる映像では演奏バンドのセットリストやCD情報が流れるようになっていた。リアルライブにおける物販の楽しみも、しっかり配信ライブとして再構築して提供してくれるようだ。QRコードも貼ってあるので、PCで配信を見ながら手元のスマホでCDを買うことができるのも嬉しかった。新しいカタチのライブの良さが、ここにも表れていた。

セットリスト モジャン棒

転落ゲエム
終日クロックワークス
劇的エイローネイア
双尾ステップ
上海ランデブー
刹那コミュニケヰション

 

“エモい”が強まって、高まって、決壊する瞬間 ―― 少年ヴィヴィッド

 2番手は少年ヴィヴィッド。MCなしでスタートした1曲目の「針音アンバランス」で色気のある声が会場に響き渡る。終盤、自宅でコーラスに合わせて思い切り声を上げるのが躊躇われるのが非常に悔やまれる。

 休みなく、旧地獄街道を行くのアレンジ「Seeker」、明日ハレの日、ケの昨日アレンジの「メランコリ」と思わず踊りだしたくなるようなナンバーが続く。特徴的なベースラインとギターのリフと動き回る照明が曲によく合っている。

 流れるような3曲のつなぎと、見ていてわかるメンバーのノリの高揚が相まって、ライブ前に予習しただけの少年ヴィヴィッド初心者であるライターも、完全にバンドの雰囲気に引き込まれてしまった。

 MCでは、彼ら自身もフラワリを見てモチベーションを上げていたらしく、画面越しに伝わってくる熱量が本物であることを裏付けている。

 現実のライブでは位置取りの問題もあり、全員を見ることはなかなか難しいが、配信ではノッているメンバーをくまなくカメラが映してくれる。実際のライブハウスとはまた違った形で彼らの情熱を感じることができる。

 静かで長い前奏から始まる4曲目は「usotsuki」。しっとりした大人のサウンドが始まる。ライターなのに語彙力がなくて大変申し訳ないが、自宅がライブハウスになったと錯覚するほど引き込まれる、とても”エモい”空間を演出している。

 続けて「レイニーレイニー」でエモさを維持したまま、再び盛り上がりを見せていく。明けない梅雨とセットリストの流れも手伝って世界観に浸りっぱなしだ。ライブステージ特有の演出もあるのだろうが、曲が始まって聴き入って、気が付いたら2曲終わっていた。そんな感覚だ。

 彼らも発表の場が潰れて、熱量の持っていきどころがこのライブだったとのこと。画面越しにひさしぶりに演奏ができる喜びが伝わってくる。

 MCの口数もそこそこに「造花」が始まる。イチ(Vo.&Gt.)の声の印象が強いが、ドラム・ベース・リードギター全員が音でしっかりと主張しており、ゆっくりしたテンポの曲でもバックの演奏が非常に熱い。

 曲明けからそのまま「Stand by Me」へ続く。演奏へ込めた感情が徐々に強まっていき、最後に決壊するような様は画面越しでもライブをできる喜びやの大きさを感じさせる。

 バンドとしてのサウンドに触れるのをすっかり忘れていたが、最初から最後まで独自の心地よい雰囲気が続いていき、あっという間に時間が過ぎ去っていた。配信ライブでこれなのだから、生音で聴いたらその場で感極まってしまうかもしれないほどだ。

 少女ヴィヴィッドの曲は、SoundCloudでクロスフェードが聴けるほか、CDも販売中なのでぜひ手にとってほしい。そしてこれから彼らの出演するライブが行われたら、ぜひ足を運んでほしい。ライブこそが少年ヴィヴィッドの本番だ。

セットリスト 少年ヴィヴィッド

針音アンバランス
Seeker
メランコリ
usotsuki
レイニーレイニー
造花
Stand by Me

 

<後半戦に続く>

 

『Grazy Crazy!!』出演サークルも参加! 10月24日(土) 17:00開催 配信ライブ『第九次百鬼戦争』

『第九次百鬼戦争』
10月24日(土)
開場17:00/開幕17:30
配信チケット¥2500

出演
モジャン棒
少年ヴィヴィッド
少女理論観測所
Kurage seek room

※イベントの都合上、本番開始前より配信ページの準備があります。
※音飛びや映像の乱れが発生する可能性があるため、安定した通信環境でのご視聴をお願いいたします。
※チケットをご購入の方は、配信終了後も≪10月26日 23:00まで≫アーカイブ(録画)をご視聴いただけます。

 

<チケット販売ページ>
https://ssl.twitcasting.tv/tanakajunjiro/shopcart/27691

 

参加サークルPR
◇モジャン棒 アキバホビー取り扱いページ
https://shop.akbh.jp/collections/vendors?q=%e3%83%a2%e3%82%b8%e3%83%a3%e3%83%b3%e6%a3%92

◇少年ヴィヴィッド アキバホビー取り扱いページ
https://shop.akbh.jp/collections/vendors?q=%E5%B0%91%E5%B9%B4%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%89

◇少女理論観測所 BOOTH取り扱いページ
https://girlslogic.booth.pm/

◇ Kurage seek room アキバホビー取り扱いページ
https://shop.akbh.jp/collections/vendors?q=Kurage%20seek%20room

「“非日常”を取り戻せ!!」東方Projectアレンジ配信ライブ『Grazy Crazy!!』ライブレポート ―― 前半戦 おわり