特集
2020/03/03

博麗神主と中国ファンとの「一期一会」。ZUNさんって、本当にすごい人なんだ。上海WePlay、上海アリス幻樂団上陸レポート

上海アリス幻樂団、上海(中国)初上陸レポート

 

 上海で、ビートまりおさんが話してくれた。

「我楽多叢誌の上海THOの記事よんだ。すげーアツいんだろうなってのは解ったんだけど、現地に行ってなかったから、なんか読んでてちょっと……ね」

 同じことを、友人の読者からも言われた。当たり前のことだけど、行けなかったお祭りの話をされるのは、寂しい。

 

「で、現地来たんだけど、最初全然スペースに人来なくてさ。『あー、あの記事だいぶ盛ったんだなあ』ってなったの」

 確かに不安はあった。あの7月の熱狂はたまたまのものだったのかなと。始まるまでは思っていた。

 

「って思ってたら、こんな大変なことになっちゃってさ」

 今回、前回以上に、この記事を読んだ人は疎外感を覚えるかもしれない。

 だって、本当にすごかったんだ。

 

 

 改めて、上海で撮影した写真を見返している。旅先で写真を取る習慣はなかったが、慣れないなりにも、あの時の自分は、要所要所で上海での風景を収められていた。

 

 でも、やはり足りない。
 あの上海の数日間の、何やらとんでもない事が起きたあの時の、沸々と今にも爆発しそうな圧力の全てが、この写真たちに収まっていない。

 あの熱量をなんとかして収めようと、このレポートを何度も書き直している。本当に、どこから書けばいいのだろう。
 でも、やはり全部は無理だ。そのくらいあの場所の「ただならなさ」は凄かった。異様だった。これが「お祭り」というものなのかもしれない。

 あの年の12月、ZUNさんが降り立った上海で何があったのか、出来る限り記録することにする。

 

 

上海アリス幻樂団、上海に立つ

 201912月7-8日。“上海”アリス幻樂団の主宰ZUNが、“上海”に降り立つ。

 そのニュースは東方ファンに、言葉遊びだけの愉快さだけではない、衝撃を与えた。特に、中国に住む東方ファンに。

 中国の東方ファンコミュニティは、以前からZUNさんへ、中国への上陸オファーをかけていたそうだ。だが様々な状況が重なり、なかなか実現することが叶わなかった。数年越しの思いが漸く成就し、上海で行われる「WePlay」というイベントにZUNさんは招待されることになった。

 

WePlay游戏文化展打造最强东方Project游戏体验区! 上海爱丽丝幻乐团即将登陆上海!(中国版-東方我楽多叢誌のWePlayに関する紹介記事)

 

 WePlayは、中国で2011年頃から開催されている、ゲームイベントだ。主宰はCiGA、北京で設立された、インディーズゲーム開発者のための業界団体で、WePlayで取り扱うのも、インディーズゲームタイトルに関する出展が主だ。
 中国には他に「ChinaJoy」という、より規模の大きなゲームイベントもある。コチラがさしずめ日本で言う「東京ゲームショウ」なら、WePlayの開催規模は「Bitsummit【※】」に近い。

※Bitsummit。2013年より開催されている、インディーズゲーム展示イベント。会場は東方イベントでもおなじみの京都みやこめっせ。

 

 そのWePlayに、「インディーズゲーム開発者」として、トークショーステージへの登壇と、アワードのプレゼンター(賞の贈呈者)として、ZUNさんが招待された。というのが今回の経緯である。

 そしてWePlayは、中国の東方ファンたちが企画運営する、東方Projectだけのエリアも用意した。

 

格段に“気合”の入った東方エリア

 

 取材班は、開催の前々日より乗り込み、設営中の会場を視察させてもらった。

 WePlayが開催されるのは、(偶然では有るが)8月の上海THOと同じ上海国際コンベンション&エキシビジョンセンター(上海跨国采购会展中心)だ。
8月の上海THOについては、以前寄稿したレポートを御覧頂きたい。

本当に「中国の東方はアツい」のか? 8月開催「上海THO」1万字現地レポート

 

 上海THOの時は、1Fホールのみの利用だった。WePlayは、1F・2Fホール両方使っての開催だ。広さとしても単純に倍になる。

 東方エリアが用意されたのは、2Fホールの一角。ホール全体の1/5程度であり、ビッグサイト1ホール分にも満たない。広さとしては、小規模な即売会くらいかもしれない。エリア自体も、行われた催し物の概要だけ見れば、小規模な東方オンリー即売会に近しい。

 が、その中で行われたコトそのものの規模が、ちょっと違う。表現としてふさわしいかどうかの判断に悩んだが、私が肌で感じたのは「”気合”が違う」だ。

 

皆をまず迎えるのは(本当に)大きな鳥居。そしてそれをくぐると現れる、電光掲示板とステージ、その横に”ミニ博麗神社”。

 

 エリアの一部は、中国・日本などのサークルが参加する「即売会スペース」になっている。こちらもただのサークルスペースではない。縁日屋台のような櫓が、通常の机の上にわざわざ設営され、東方エリア全体の雰囲気を統一するのに、一役買っている。

 

 weplayはゲームイベントだ、もちろん東方エリアにもゲーム展示が有る。
 日本のゲームサークルが多く招待され、試遊展示コーナーには14種、総計32台の試遊台PCが置かれた。

 

エリア内の別ブースには日本の東方二次創作ゲーム合同展示企画「博麗電脳試遊会」も参加。こちらのゲームは合計で28なので、合わせれば42種類もの日本の東方二次創作ゲームが海を渡って展示されたことになる。
WePlay東方エリアのポスター。奥にはこのWePlay会場が見え、このイラストの各所に、今回展示になった二次創作ゲームタイトルの要素が散りばめられている。筆者は、会場で即タペストリーを買って今は自分の部屋に飾っている。

 ゲーム展示はこれだけではない。東方原作の展示も有る。しかも遊べる。

 

 大鳥居の横にある、東方エリアの入り口「東方科普展示区」。ここに、全ての原作が展示されたのだ。

 そもそもweplayはオールジャンルなゲームイベント、勿論東方Projectを知らない人もやってくる。そんな、東方を知らない人向けに、パネルによる「東方Projectとは」を説明する紹介エリアがこの「東方科普展示区」だ。

 

 東方に関する説明パネルに続いて、東方Projectに関する出来事の年表がズラリと並ぶ。
 旧作を含めた原作がリリースされた年月日、例大祭などのイベント開催日はもちろんのこと、初めて東方が取り上げられた雑誌の発売日、ZUNさんの登壇した講演の日(確かZUNさんの結婚披露宴の日も書いてあった気がする)………東方(と、ZUNさん)に関連する主要な出来事の日付を、おおよそ全て網羅しているのではないか?というレベルの年表だ。

 

年表の裏には書籍も含めたWin版以降の全作品展示。

そして東方幻想郷。展示品なのでお手を触れないでくださいの表示。(CD-R蓬莱人形などはありませんでした)

 

 

 そして特筆したいのが、日本の年表と並列して、中国の東方ファンコミュニティの歴史も記載されていたこと。

 その始まりは早く、2004ー5年前後から活動が有ったのが観測されていることや、ここ最近に、多くの東方オンリー・ライブイベントが乱立し始めたことなどが、一気に把握出来た。海外のファンコミュニティ情報として、これほどまとまったものが見れる場所は非常に貴重かもしれない。

 

年表はZUNさんの生誕日からスタート。と思いきや…
「1884年:博麗大結界制定」からスタートする。作った人の、愛が、重い。

 

 そして先述している通り、写真に写っている様に、この年表の前に置かれたPCたちが「東方原作のプレイアブル展示」だ。東方紅魔郷以前にリリースされたPC98ソフト、いわゆる「旧作」と呼ばれる5作も、その場で遊べる状態で展示されている。

 そもそもPC98版の入手は、日本国内であっても大変に困難であり、それらを日本国外のファンが5作ともすべて、しかも動く状態のPC98実機とともに入手していて、会場に展示しているという事実が、目の前にある。強火のオタクが近くにいる痕跡を見つけると、ワクワクせずに居られないのがオタクという生き物だ。

展示されている1台の中に「コンピュータ部」と日本語で書かれているものがあった。おそらくどこかの高校で所有されていたのだろう。まさかこのコンピュータ部の部員たちも、海を渡って此処に展示されるなんで、思いもしなかったに違いない

 

 歴史の先には「東方コミュニティの歴史」についての独自調査資料、こちらはコラム形式で「黎明期」「過渡期」といったそれぞれの状況についての説明がされていた。

東方我楽多叢誌の事ももう書いてあった。はやい

 

 

 他にも、中国での東方コミュニティの現状をデータで記しているパネルも。中国語を読むことができないのが本当に悔しいと思わされる。
(でも、慣れてくると漢字なのでなんとなく書いていることが分かるようになってくるのが、ちょっとおもしろい)

 

 「もしも、東方Projectが国立博物館で企画展示を行ったら」。そんな“もしも”の形が、目の前にあった様に思えた。

 東方に関する歴史や発表を行っているファンは、もちろん日本国内にも多く居るし、こういった自己研究に関する企画展示が行われることも有る。内容も引けを取るものではない。旧作を含めた原作の実機試遊展示だって、各即売会などで自主的に行っているものも多い。

 敢えて大きく異なる所を挙げるなら、それらが全て「一同に会している」こと。最後の展示パネルには、複数人の著者名・企画担当者の名が描かれ、この展示を共同で作り上げたという文責を記していた。情報は単一でも力を持つが、集合され、連結され、整列された状態になると、非常に強烈な力を持つ。

 彼らはこの日のために、今まで集めてきた情報を集合し、連結し、整列して、展示の仕方まで整えた。

 彼らはなぜ、どうしてここまで、この日のために力を合わせたのか?

 

 答えは一つだ。この日が、”神主”が来るお祭りの日だからに他ならない。

 WePlay当日、待ちに待った時が訪れた。

 

ZUNさんの異大陸転生無双ーなんかやっちゃいました?

 取材班は早朝に到着。朝の設営の様子などを収めたり、東方キャラクターに囲まれるZUNさんのエモーショナルさにときめいていたら、いつのまにか開場の時間が近づいてしまった。とはいえ当たり前ながら、来場者がすぐに来るわけではない。東方エリアが有るのは2階だし、入場は1階から。そもそもweplayには様々な展示物が有る。2階には、色々と回ったあとに来る。その予想は大変に甘かった。

 

 実はこれ、開場して間もない頃のエリアの様子。すでに人がたくさん来ている。

 実は、WePlayには、ちょっと値段はお高いが、通常の入場時間より先行して入場可能な「VIPパス」が存在する。VIPパスの利用者が、真っ先に東方エリアに向かってきたのだ。
 目的は一つ。上海アリス幻樂団。そのスペースに居るZUNさんから、原作を手渡しでもらうために。

 運営も、VIPパスのこういった利用は想定外だったのか、東方エリアは、通常の開場時間の時点で既に混雑の気配が見え始める。それを見ていたWePlay側の運営スタッフも慌て始め、場内を警備する公安たちも続々と東方エリアに集まってくる。

 どんどん混雑は加速する。正直な話をすると、一番混雑していた時間のエリア内写真は、大変申し訳無いことに、撮れていない。なぜなら人がエリアから溢れ出してしまい、スタッフや公安が完全に入場をシャットアウトしてしまい、中にいる人も次々出され、外から様子が伺えなくなってしまったからだ。

 結果、通常の開始時刻から1、2時間もしないうちに、入場する列は崩壊。エリア内ステージで行う予定だった企画は、一旦中止。東方エリアは、一時的にではあるが閉鎖された。

 

 

 そんな中ZUNさんはどこへ行ったのかというと、2Fの上海アリス幻樂団スペースから移動して、1Fの大ステージへ。元々企画されていた、インディーゲーム開発者としてのZUNさんへのトークショーである。

 大きなステージには沢山のプレス、そして、抽選で選ばれた一般参加者。一般参加者の席は50もなく、ほとんどの人はステージの外で立ち見。ステージはパーテーションで囲われ、入り口は一つ。そこに立ち見のお客さんが殺到すると………

 

 こうなる。

 他のエリアにまで、立ち見が溢れかえってしまったため、トークショーも十数分と経たずに、完全に中止。
 後にZUNさん自身が、二軒目ラジオやトークイベントなどで語っていたそうだが、「なぜこんな事になっているのか」と、ZUNさんが公安に“怒られる”一幕もあったそうだ。

「ZUNさんがどうしても見たい人の図」

 

 

 とんでもないことになった。
 そう。一介のインディーゲーム開発者が、ゲームイベント全体を“破壊”してしまったのである。

 

 いや、勿論良いことではない。良いことではないが、一つ言えるのは「誰もこんなことになるとは思っていなかった」ということに尽きる。

 東方エリアの企画者も、運営するスタッフも、(もちろん公安も、)まさか此処まで中国のファンたちが「ZUNさんが来ること」を待ち望んでいたなんて。その真の熱量を、ファンたち自身ですら、わかっていなかったのだ。

 

世界を変える箱庭のうねり

 前日の反省を受け、東方エリアはオープンされた。
 エリア内は完全一方通行、入場規制を敷かれた状態で、“前日の二の舞にならないように”措置を取られた状態で、開催がスタート。
(後で聞いた話だが、公安に怒られた影響は非常に大きく、本当ならそのまま東方エリアは閉鎖、2日目は東方エリアの開催なしの可能性もあったらしい)

 

 2日目も1日目と同様、多くの人が押し寄せた。エリアの運営スタッフたちの努力により、前日のような”崩壊”に至ることなく、東方エリアは運営された。とはいえ、入場列はホールを横断するのではないかという長さではあったのだが。

 

 それぞれのブースに、ファンたちがごった返す。

 原作プレイコーナーで、貴重な旧作を目を輝かせて遊んでいる女の子二人組。
 原作展示コーナーを写真に収めている、若いファン。
 日本からきたサークルの作品を買い、貴重な「サークルとの交流」を楽しむ人。
 ゲーム展示コーナーで、右から左に全部遊んでいく、高校生くらいの集団。

 

 見ていて、ワクワクが止まらなかった。


 以前もレポートで書いたが、彼らは僕らと本当に同じだ。なんなら、僕だって取材がなければ、このエリアで本当はずっと遊んでいたかったくらいだ。そのぐらいこの場所はワクワクする。ワクワクするものを、中国のファンたちは、WePlayの中に作った。

 WePlayという、巨大なゲーム展示会の中に現れた、小さな箱庭。その箱庭をひと目見ようと、そこで行われている「お祭り」に参加しようと、大勢の人が集まる。そのムーブメントは、人のうねりは、時に、箱庭が置かれた世界そのものの在り方さえも変えてしまう。

 まさに私達が、幻想郷で、東方が好きな人達の中で見てきたそれが、その日にはあった。一つの縮図だったのかも知れない。

 

ZUNさんって、すごいんだよな

 さて、2日目は、1日目のような問題が何も起きなかったのかというと、そんなことはない。

 1日目は、1Fの大ステージでの、ある意味“外向け”な講演があったのに対し、2日目は東方エリア内に設けられたステージでの、“ファン向け”な企画が用意されていた。
 が、昨日の様子である。小さな幻想郷の、小さな舞台の上に、一度世界をめちゃめちゃにした“破壊神(主)”が降臨できるはずがない。なぜなら公安が怒っちゃうので。

 

 とはいえ、この東方エリア内でのステージ企画は、元々大々的に告知されていたもの。直前に開催中止の通達があったにもかかわらず、開催時間より前からかなりの人が東方エリアに押し寄せていた。というか、みんなエリアから出ようとしないので、エリアに新しい来場者を入れられないのである。入れない人の列は、どんどんエリア周辺を侵食する。このZ-クラス世界終焉シナリオは、昨日も見たことがある!

 世界を壊すわけにいかない運営スタッフたちは、文字通り会場内を“奔走”していた。どこでもいい、会場内のステージが空いていないか、上へ下への状態。なんとかファンたちに企画を見せられるよう、我らがZUNさんがステージに建てるよう、関係各所と綱渡りをしていた。

 そして、閉場ギリギリの時間、2F会場内で最も大きいステージ「eスポーツアリーナ」の「最後の一コマ」を確保。なんとかステージを執り行うことに成功する。

 

 様々なスタッフの尽力の最寄、このとてつもなく大きいステージで行われた、大切な大切なイベント、それは! 「ZUNさんのききビール大会」。

 

 

 巨大なLEDととても広いステージ上を、100人近い観客席・大掛かりなカメラを持つ取材班・ステージ外の立ち見・人混みでステージにすら近寄れないので突発的に発生したライブビューイングを別エリアから見る人、あと公安、合計でざっと200人近い観客が、東方キャラクターにお酌をされて、ずっとビールを飲んでいる一人の男性(と横の通訳さん)をじっと見つめている謎の様子の写真を、幾つか御覧頂きたい。

 

 ちなみにZUNさんはききビールに全問正解していた。流石である。

 

 

 ちょうど、ぼくが見ていた前の席が、ZUNさんの入場ファンファーレを演奏した、演奏団の方々だった。
 その中の一人の女の子が、手元のスマートフォンと、壇上のZUNさんとずっと交互に見て、口を手で抑えていた。

 スマホで見ていたのは「ZUNさんとの記念写真」だった。

 後で聞いた話だが、演奏団の方々は、入場前のZUNさんと楽屋が同じで、その際にZUNさんとの記念写真を撮らせてもらったのだそう。

 自分があのZUNさんと一緒の写真を撮ったということ、手元の写真には今目の前のステージに上っている人と同じ人が写っていること、そしてこの人は自分の大好きな東方Projectを作った人であること。今目の前にある光景がずっと信じられなくて、その子はずっとスマホを見ながら、口元を抑えて感極まって震えていたのだ。

 

 そうなんだ、そうなんだよな。ZUNさんって、すごい人なんだよな。

 

 日本にいる僕たちは、ときどき忘れそうになる。

 ZUNさんは、年に一度のコミケに行けば大体見れるし、
 一ヶ月かニヶ月に一度はYoutubeの配信で声が聞けるし、
 何ならニコニコ超会議に行けば、一緒に写真を撮ってビールを飲むことだって出来る。今、会いに行ける原作者だ。

 中国のファンたちにとっては違う。彼らにとっては、この一度のチャンスを逃したら、いつ会えるか、いつその姿を見られるかさえ解らないのだ。
「一期一会」。元々は茶道に由来する言葉で、「あなたに出会ったこの一時は、一生に二度と無い一度きりのもの(かもしれない)。だから、この一度に、今出来る最高のおもてなしをしよう」という考え方。
 WePlayの東方エリアを作った東方ファンたちは、正にこの「一期一会」の精神を形として表したと言っていい。“気合”を入れた、というより、何をどうしても気合が入ってしまったのだ。「一期一会」なのだから。

 海の向こうのファンたちにそう思わせる位、ZUNさんって、すごい人なんだ。

 

 近いから、つい親しげに考えてしまうが、ZUNさんは「東方Project」の創造主、「博麗神主」だ。

 僕たちがずっとずっとずっと遊んでいる、この東方の世界の、全てを作った人。

 

 この人が作った世界が、今、もしかしたら、日本と中国をつなげている。

 そういうことを、目の前でわからされてしまったから、だから僕は、スマホの写真を見て感極まる彼女の背中を見て、泣いてしまったのかもしれない。

 

 

 

 2019年12月のあの日、そんな熱い祭を共有することができた。
 けれど、中国は今、少し大変な状況にある。

 この記事を執筆し始めたときには、まだそこまでの事態になる前だった。だが、今となっては「だからみんな中国の東方イベントに行こう!今すぐ!」なんて、とても言えない状況だ。今すぐになにか行動を起こす、というのは、ちょっと難しい。
 ハッキリ言って、こういう不測の事態において、個人の趣味は、エンターテイメントは、力を失ってしまうことがある。

 

 でも、中国で知り合った彼らはweiboで、現地で作ったLINEグループで、現地で交換したwechatで、なんならTwitterで、今日も東方のことを話している。家から出れない事を逆手に取って遊んでいる。中国の人たちのおもしろTiktok動画を共有してくれたりする。ゲームが、オタ活が、ある意味とっても捗るみたいな話もしてくれる。

 オタクはインターネットでつながっている。

 地方住みで、簡単に例大祭にいける関東周辺の人が羨ましいと、常々言っていた友人がいた。
 そういう友達が、念願かなって東京のイベントに、例大祭に来た時に、とにかくうれしくて、僕の知っている“良い”サークルを沢山教えたり、“戦場”から帰ってきてお互いの戦利品を見せ合ったりしたものだ。

 中国の彼らとも、いつかそういう事ができるんじゃないか、そう思っている。

 

 Weplayの東方エリアで感じたあの熱量は、いまの状況が収まったなら、そういうことをしたい、と思ってしまうような熱さだった。

 もしまた元の日常が戻ったなら、そんなことがあったねと話せる位の日々が訪れたのなら、日本のみんなと一緒に、今大変な彼らを直接労うことができればいいな。 そう願っている。

 

博麗神主と中国ファンとの「一期一会」。ZUNさんって、本当にすごい人なんだ。上海WePlay、上海アリス幻樂団上陸レポート おわり