「作品に余白がある方が楽しい」一般的な作品の楽しみ方と、オタク的楽しみ方の違いとは?

東方女子オタク会議 ~ランコ(豚乙女)、紫咲ほたる(EastNewSound)、咲子(ワタシキサマ、少女理論観測所)~【中編】

今ハマってるのは「平成仮面ライダー」「FateとBTS」「ツイステ」

――中編では東方の話を飛び出して、みなさんのオタク話を伺っていければと思います。まずは、今ハマってる作品やジャンルについて教えてください。

ほたる:
 最近ハマってるのは平成仮面ライダーですね。ルーレットで出たタイトルから観ていて、今はクウガを観ています。「劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer」が生鮮食品だから早く観ろって友達に言われて観に行って、そこから頭が狂っちゃって。そのまま東映特撮ファンクラブに入りました。

――沼への沈み方が鮮やかだ…!

ほたる:
 ちょっと歪んだ楽しみ方かもしれないですけど、平成仮面ライダーって結構大人の事情で、話を最初の想定通りに最後まで進めるのが難しいみたいで。おもちゃを売るタイミングとかいろんな事情がありつつ話を作っていて、その瞬間瞬間を必死に生きてる感じがすごく好きなんです。「このキャラはきっとこういう風にする予定だったんだろうけど、変わったんだな」とか。特に今はコロナの影響で、一時期撮影を休止していたんですよ。なのでテレビ本編で登場する前のおもちゃがもう販売されていて。発売スケジュール変更できないんだろうなって……。難しい問題なんですけどそういう事情もあるので、本編でうまく辻褄が合っているのを見ると「すごい!(高音)」って嬉しくなっちゃう。

ランコ:
 私は自粛期間中、BTS【※】に突然ハマって。20年来の友人が突然「ちょっとこれを見ろ」ってプレゼンをしてきて軽い気持ちで見始めたら、もう……ね。おしまいになってしまって。よければプレゼンしますよ!(起立)

※BTS:2013年6月13日にデビューした韓国の男性ヒップホップグループ。2019年にはビルボード・ミュージック・アワード トップ・デュオ/グループ賞、トップ・ソーシャルアーティスト賞を受賞している。

ほたる:
 オタクすぐ立つ!

ランコ:
 それがきっかけで韓国語にも興味を持って、勉強し始めたんです(笑)。本当は7月に韓国で東方のイベントがあって、豚乙女も出るはずだったんですけどそれもコロナでダメになっちゃって。

――先日韓国で行われた東方イベント「蓬莱祭」へのビデオレターで、韓国語で挨拶されてましたもんね。あれはBTSで鍛えられたスキルだったんですね。

ランコ:
 高校生とかが洋楽や洋画にはまって、英語喋れるようになったりするじゃないですか。私は当時全然海外の文化に興味が無くて……もったいなかった。英語圏の推しがほしかった。

 あとはここ1年くらいで突然Fateに目覚めて。もともとAimerさんが好きだったんですけど、彼女の「I beg you」という曲が、映画「Fate/stay night [Heaven’s Feel] Ⅱ.lost butterfly」の主題歌なんです。もともと曲単体で聴いていて、「すごく良い曲なんだけど、多分この曲をちゃんと理解するためには映画を観る必要があるな。でもこの映画は2作目だから、まず1作目を見ないといけないし、そうなるとアニメも……」と悩み始めて。
 それでFate好きの友人に「まず何から見たらいい?」と相談したら「PCゲームからやれ、貸すから」と(笑)。借りてから一週間、ほぼ寝ずにやりましたね。

咲子:
 オタク寝ないよね(笑)

ランコ:
 続き見届けないとすっきりしなくて、寝られないのよ。

咲子:
 私が今ハマってるのはツイステ(ツイステッドワンダーランド)【※】ですね。

※ディズニー ツイステッドワンダーランド:アニプレックスとウォルト・ディズニー・ジャパンが製作した日本のスマートフォンアプリ、「ヴィランズ学園アドベンチャーゲーム」。異世界「ツイステッドワンダーランド」に召喚されてしまった主人公が、名門魔法士養成学校「ナイトレイブンカレッジ」にて、ディズニー作品のヴィランズ(悪役)をモチーフにビジュアル化された、才能豊かだが協調性皆無の問題児ばかりの生徒たちに翻弄されながらも、元の世界へ帰る方法を探そうとする物語。原案・メインシナリオ・キャラクターデザインは漫画家の枢やな。

ランコほたる
 出たー!!

ランコ:
 絶対一人はいると思ってたよ! 誰推し?

咲子:
 いやあ…ツイステは久々に来たね。オクタヴィネル寮の3人推し。私基本的に箱押しになるので。

「オクタヴィネル寮」の3人。公式サイトより

――ツイステ、私もやってるので、わかります。

咲子:
 誰推しですか?

――メインストーリーが配信される度に推しが変わっちゃうんですよね…ミーハーで申し訳ない。

咲子:
 いやそれでいいじゃないですか!(右手が前に出る)

ランコ:
 作品のオタクってそうだから!(右手が前に出る)

ほたる:
 わかっているじゃないですか!(右手が前に出る)

咲子:
 お恥ずかしい話なんですけど、私最初はディズニーのエイプリルフールか何かかと思ってたんですよ。「まさかそんなゲーム出る!?」って思って。そうしたら本当にアプリがリリースされて、友達も何人かやってたから、面白そうだなと思って始めました。
 ツイステって、シナリオがすごく…なんて言えばいいんだろう。ドロドロとしていて、キャラクターが人間くさいんですよね。 よくあるシナリオだったら、相手が「ゴメン」って謝ってきたら「しゃーないわ」って許す場面も、ツイステだと「ゆるさーん!」ってなるのが良いんですよ。

――ちゃんと、意地が悪いんですよね。

咲子:
 ヴィランがモチーフになってるのでね。

 

3人のインターネット入りと、オタクの目覚め

――3人のインターネット入りについても振り返っていただきたいです。

ほたる:
 最初のインターネットは、お絵かきBBSに書き込みしていて、その後ホームページビルダーでイラストサイトを作って、オフ会を主催して……

咲子:
 …ふふっ(笑)

ほたる:
 どうしたの? ……あ、やめてその話!

――なんですか(笑)

ほたる:
 私最初のハンドルネームがマジで厨二病過ぎて(笑)。哀愁の哀、暗い、明るいに電気の電で哀暗明電(アイアンメイデン)だったんです。

ほたる:
 創作の最初の最初は、学校でクラスの有志の子たちと雑誌を作ってたんですよ。

ランコ:
 ああー、それこそ同人誌だ。

ほたる:
 まあ、とは言っても、内容はミニキャラの一次創作みたいな。ハム太郎とかピカチュウみたいなノリですよね。4人くらいで合同誌を月に1冊作っていて。初めての二次創作は、ポケモンです。カスミの絵とか書いてましたね。

――もちろん当時は二次創作という感覚ではなくて、好きな作品を真似して描くっていうことですよね。

ほたる:
 ですね。それで……あの、当時、本屋でアンソロジーとか普通に売っていたじゃないですか。そういう「ポケモン4コマバトル!」みたいな、あのノリだと思うんですよ。今考えるとめっちゃ同人ですけどね。本屋アンソロは本当に罪つくりだった。

ランコ:
 あの当時って結構ギリギリなのも売ってたしね。

ほたる:
 すごいよね、載ってるカップリングもバラバラだし、今じゃ考えられないよね。だから雑食のオタクが育つんだよ!

咲子:
 地雷ですとか言ってらんないもんね。

ほたる:
 一回口に入れてから考えてみろという……まあ良い時代なのか……黎明期だったからできたのかもね。

咲子:
 オタクが育つ環境がありすぎちゃったよね。

ほたる:
 兄もオタクだったのでよく一緒に漫画の話もしていたんですけど、今思えば自分の中にカップリングという意識が入ってきたのが、1つの分かれ道だったのかなって。サトシ×カスミが好きだったんですよ、その話を兄にしたときに、「へぇ……?」みたいな、いつもより反応が薄くて、おやって思ったことがあって。カップリング意識が入ってくるのって、二次創作オタクならではかもしれない。

ランコ:
 私も最初はポップンでした。中学一年生くらいのとき、姉と一緒にポップンの同人サイトを作って。そのころに初めてコミケも行って。妖怪バンド(Deuil)のベースのスマイルが好きだったんですよね。

DeuilのBass.Smille (ポップンミュージックエクラル公式サイトより)

ほたる:
 あんなの嫌いな女いませんよ!

ランコ:
 それまでも「最遊記」の沙悟浄が好きだったりしたんですけど、思えばポップンを好きになってから、「このキャラの身長は何センチだろう」とかを考えるようになったんです。私はそれがオタクの始まりだったかもしれない。そこから「この人達は普段どういう風に生活しているんだろう」とかって考えて、二次創作に進んだし。

ほたる:
 ポップンは余白がすっごいあるからさ、二次創作のしがいがある。

ランコ:
 それこそちょっと東方と似てるよね。キャラがたくさんいて、でも誰と誰の接点があるとかそこまで詳しく描かれていない。「この一枚絵で想像するしかない!」みたいな。

咲子:
 一枚絵で戦い続けたよね。

ランコ:
 戦い続けたね。

咲子:
 「新規絵が来た…!?」みたいな。一枚の絵で頑張って食いつないでた。

ランコ:
 え、ヒプノシスマイクの話してる!?(笑)

ほたる:
 でも余白があればあるほど超楽しいから。想像しがいがあって。

咲子:
 「余白があって楽しい」って思うのはもう、オタクだよね。

――咲子さんのオタクの目覚めはアニメージュがきっかけとのことでしたけど、インターネット入りについてもうかがえますか?

咲子:
 インターネット入りは、一番最初は小学校の時に仲間内でBBSを立てるのがはやってたんですよ。その後ふみコミュに行きましたね。今は綺麗なデザインになってますけど当時はもっとどピンクで。小学5年生~中学2年生くらいの子たちが集まって、「文通相手探しています」とか「ミニモニが好きな仲間探してます」とか書き込むサイトでした。
 そこから、お絵描きチャットとかに行って、そこで仲良くなった人が個人サイトを作っていたのでそっちの方に入り浸って…みたいな感じ。

――ハードはパソコンですか?

咲子:
 そうですね、家のパソコン=自分のパソコンみたいになってたので占有してました。

ほたる:
 HTMLタグ打ってたなあ。タグいっぱい載ってる分厚い本とか買って。

――一定の世代の女子はなぜかHTMLの造詣が深い、みたいなのありますよね。

ランコ:
 あぶり出しですよねもう。

咲子:
 そうだ私、一番最初につくった夢小説は“鋼の錬金術師”だった。それで書いた夢小説をクラスの子とかにも見せて…今思えばマジでハズい!数年おきに思い出して死にそうになる。ジオシティーズ【※】なくなって助かったー!

※Yahoo!ジオシティーズ:アメリカのYahoo!および日本のYahoo! JAPANがかつて運営していた無料のウェブサイト提供スペース。無料で開設できるウェブサイトスペースサービスとしては最大手で、2000年代のインターネットコミュニティの多くがこのサービスを利用したものだった。2019年3月に、採算面や事業継続が困難とYahoo! JAPANが判断、惜しまれつつサービスを終了し、ジオシティーズで作られていた多くのサイトはインターネットから消失した。

ランコ:
 みんなの黒歴史が一掃されたよね。

咲子:
 これで安心して眠れる(笑)。

 

クソデカ感情を送り付けたい!

――普段は活動者であるみなさんですが、誰かを推すオタクとしての一面も掘り下げていきたいと思います。ランコさんが作家さんにファンレターを送ったというツイートがありましたが、みなさんは作り手に対してアクションをしにいくタイプなんでしょうか?

ランコ:
 私はわりとします。東方ジャンルだと自分も活動してるので、相手に気を遣わせるかもしれなくて難しいんですけど。

ほたる:
 わかる。東方の作品はひっそり見てる。

ランコ:
 東方以外で、単純に好きな作品の二次創作をやってる人であれば、メッセージを送ったりコメントしたりはします。とにかくクソデカ感情を伝えたい。「お前の小説を読んで心がこんなにぐちゃぐちゃになったんだ!!!」とお伝えしたい。

――作り手側からすると冥利に尽きると思います。

ランコ:
 いざ書こうとすると「いきなりこんなクソデカ感情送ってきて私すごい気持ち悪くない……?」って思ってちょっと足踏みすることもありますけどね(笑)。

ほたる:
 私は公開コメントじゃない、いわゆるDM機能で送るのが多いですかね。全然別の名前使ったりしますけど、とにかく感謝を伝えなきゃと思っていて。この世にこの作品を生んでくれて、なおかつそれを公開してくれてありがとうって。「不躾に失礼いたします」みたいな感じで。

咲子:
 返事いらないんだよね。送りつけたいだけ。

ほたる:
 そう! あと作家さんがリクエスト募集してるのを見かけたら、感想をしたためた上で「あなたのこれが読みたいですが無理でしたら全然いいです」みたいな、すごい長い文章送っちゃうこともありますね。身近な友人とかだったら、なるべく手書きの手紙を渡します。

――東方関係なくですけど、最近マシュマロとか質問箱に匿名で心無いコメントが寄せられて、作り手が傷つく事例も多いですよね。でも本来、無料で作品を見られることに感謝すべきだな、と思います。 

ランコ:
 口座番号教えて欲しいですもん! 振り込むから!

咲子:
 私は東方界隈だと、極力、自分のことを知られたくないですね。というのも、作品が最高だったら作家を好きになってしまうんですよ。かつ、好きな人に己の存在を知られたくないので、絶対にインターネットでしか買わないんです。顔を合わせないように。どうしても委託しないとか会場限定みたいなときは…会場に行って「イッサツオネガイシマス」って買ってすぐに去る(笑)
 でもそれで応援できなくて創作活動やめられたら困るので、匿名で感想は送ります。感想を書いていると、自分が伝えたい感情に対しての語彙力がなさすぎて絶望するんですよね。このニュアンスで伝えたいけど、でもこの言葉はたぶん違う、これだと私の言いたいことは相手に伝わらないって。絶望して、突然本とか読んで勉強し始めます。そうやって書いた怪文章を「初めまして長文失礼します」って送り付けるけど、絶対名乗りたくはない。

――「推しは推せるときに推せ」なんて言葉も一時期はやりましたけど、作家も応援できるときにしないとですね。

 

中編はここまで。後編では、一番盛り上がった好きな東方キャラの話や、カップリング解釈についてのトークをお届けします。

 

「作品に余白がある方が楽しい」一般的な作品の楽しみ方と、オタク的楽しみ方の違いとは? おわり