ZUNさんがコミケに落選!?そして「紅魔郷」の制作、「すべて、弾幕をおもしろくするためにあるんです」“スペルカード”の誕生・ストーリー・キャラクターについて

【第5回】

音楽サークルとして申し込み

――前回の続きから。仕事で多忙だったが、コミックマーケットに出ようと思ったということですが。

ひろゆき氏:

 その時に、会社を辞めようと思ったんですか? 

ZUN氏:

 会社を辞めるのは2007年ですから、まだかなり先の話ですね。

 その後、2001年の冬コミに参加しようと申し込んだんですけど、その時はまだゲームを作る気はなくて。音楽サークルとして申し込んで、音楽CDを出そうと思っていたんです。でも、その時は落ちちゃって。

――音楽サークルとして申し込んだ時のサークル名は? 

ZUN氏:

 「上海アリス幻樂団」です。この名前は、もともとは音楽サークルとして申し込んでいたからなんですよ。

ひろゆき氏:

 なるほど! 

ZUN氏:

 でも2001年の冬コミには落ちたんです。それで一般参加で会場に行ったら、先ほどお話ししたように、同人ゲームの需要と供給が合っていないのを見て。じゃあ自分で作ろうかなと思って、2002年の夏コミはゲームサークルで申し込んでみたら、今度は受かったんです。

コラム1 「上海アリス」の由来

Windows版「東方」の誕生

――それで2002年8月の夏コミで、Windows版「東方」の最初の作品として発表されたのが、『東方紅魔郷 ~ the Embodiment of Scarlet Devil.』【※】ですね。この時は同時に、音楽CDの『蓬莱人形 ~ Dolls in Pseudo Paradise』も発表されています。

※『東方紅魔郷 ~ the Embodiment of Scarlet Devil.
2002年8月のコミックマーケットで発表された、Windows用弾幕シューティングゲーム。「東方Project」の第6弾であり、『東方妖々夢』『東方永夜抄』と続く3部作の起点となる。Windowsで初の「東方」ということで“スペルカードシステム”などの新たな試みがいくつも採り入れられている。(画像は上海アリス幻樂団より)

ひろゆき氏:

 久しぶりにコミケに参加してみて、どうでした? 売れました? 

ZUN氏:

 全部はけましたよ。PC-98でゲームを出していた時のファンの人たちが、思っていたよりも大勢いて、また来てくれたんです。4年も経っているし、PC-98からWindowsになっていて、ぜんぜん別物だと思っていたのに。

――『紅魔郷』はPC-98時代から、ゲームシステムも世界設定もいろいろとアップデートされていますが? 

ZUN氏:

 『紅魔郷』はどちらかというと、新作のつもりで作っていて。昔こういうゲームを作っていたのは内緒にしておいて、「スゴいゲームがいきなり出てきたぞ!」みたいな感じにしたいと思っていたんです(笑)。

 ストーリー的にもそんなにつながってないし、ここから遊んでも何の問題もないですから。そこに、作っていなかった間に溜まっていたアイデアを入れていって。

――会社で仕事としてゲームを作っているあいだも、「東方」のいろんなアイデアが溜まっていたのですか? 

ZUN氏:

 溜まっていましたし、会社でもシューティングを作りたくて、そういう企画書を出したりもしましたね。

ひろゆき氏:

 じゃあ、タイトーから「東方」が出ていたかもしれない? 

ZUN氏:

 それは「東方」ではなくて、同じようなアイデアのゲームという意味ですね。

ひろゆき氏:

 そのゲームが実現していたら、今頃はタイトーで成功していたかも? 

ZUN氏:

 もし出ていても、成功はしなかったかもしれないですね。「東方」の人気が出たのは、コミケだからかもしれないので。会社で作るのと個人が作るのでは、ユーザーの受ける印象も違いますから。今はインディーも大きな会社も、そんなに差がないですけど。

ひろゆき氏:

 自分のゲームを作っている間、会社の仕事はちゃんとやっていたんですか? 「どうせ辞めてやらぁ!」みたいな感じで、サボっていたとか?(笑)

ZUN氏:

 そんなことはないですよ。会社で給料をもらっていなかったら、自分の好きなようにゲームを作れないと思っていたので。だから会社も大切にしていました。

ひろゆき氏:

 社内で「コミケでゲームを作っている」と言っていたんですか? 

ZUN氏:

 いえ、言ってないですよ。まぁ、すぐにバレるんですけど(笑)。

コラム2 Windowsでのゲーム開発

スペルカードが生まれた理由

――PC-98版の「東方」と、Windows版の「東方」で、ゲームの作り方を意識的に変えたところはありますか? 

ZUN氏:

 Windows版からは、ストーリーやキャラクターの世界観を、もっとしっかりさせようとしていますね。

ひろゆき氏:

 ストーリーがあるほうがいいと思ったのは、どういうところからなんですか? 

ZUN氏:

 シューティングゲームに足りないのは、敵の攻撃に個性がないところなんですよ。そこで敵の攻撃に名前をつけたんです。弾幕に名前をつけたら、弾自体にとたんに意味が出てきて、おもしろくなってきて。

――それが“スペルカード【※】”のシステムですね。ちょうど、格闘ゲームの必殺技みたいなニュアンスがありますよね。

※スペルカード スペルカードとは、「東方」のキャラクターが自分の攻撃(弾幕)に名前をつけたものである。スペルカードの発動中は背景が変化し、画面にスペルカード名が表示されるなど、独自の演出を見ることができる。ちなみに敵のボスキャラだけでなく、自機キャラもスペルカードをボムとして使用できる。(画像は上海アリス幻樂団より)

ZUN氏:

 でも、ただ弾幕に名前がついていればいいわけじゃなくて、背景にストーリーがないと、その名前がおもしろくならないんです。つまり、ゲームの弾幕をおもしろくするために、その一要因としてストーリーが必要なんです。

ひろゆき氏:

 それまでのシューティングゲームにも一応ストーリーはありますけど、みんな知らないし、別に興味もないじゃないですか。

ZUN氏:

 もちろん「東方」も、ストーリー単体では別におもしろくはないですよ(笑)。ただ、それがないと弾幕に興味を持ってもらえないんです。弾幕に興味を持ってもらうために、それを撃ってくるキャラクターに興味を持ってもらいたい。

ひろゆき氏:

 シューティングゲームに興味を持ってもらうために、キャラクターも可愛く、わかりやすくして、弾にも名前をつけたわけですね。

ZUN氏:

 そうですね。そういった要素がどこに集約されるかというと、結局は“弾”なんです。弾に当たれば死ぬし、逆に避け続ければクリアできる。僕がいちばん好きなのはシューティングゲームなので、それをおもしろくするために、すべての要素を用意しているんです。

 ただ、だからといって、別にキャラクターが女の子でなくてもいいし、今の「東方」のようなストーリーでなくてもいいわけで。なぜそうなっているかというと単純に、それらの要素は全部、自分の好きなものだからです。「自分の好きなものだけで構成すれば、それでいいじゃん」と。でもそれは最終的にはすべて、弾幕をおもしろくするためにあるんです。

(第6回へつづく)

 

 

聞き手/ひろゆき、斉藤大地

文/伊藤誠之介

カメラマン/福岡諒祠(GEKKO)

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