これは、彼らの人生を変えるライブなんだ。 2019年上海開催東方ライブ「魅知的幻想歌謡会」レポート(後編)

「魅知的幻想歌謡会」ライブレポート

アイドルライクな二人の、めいっぱいな可愛さ ー 4th.「bunny rhythm」

 ユーロビートのイントロが流れてしばらく、ピンクのロリータ調の衣装に身を包んだVo.琉芸MirukuVo.缨缨Eiがステージイン。

 最初の曲、「drifting rhyTHm!!!」がスタートする。「少女綺想曲~ Dream Battle」の日本語詞ユーロビートアレンジであるこの曲を、それまでの盛り上がりを更に加速させるように歌っていく。ユーロ発祥の音楽が、日本語詞になり、中国の歌手によって歌われている。なんだか多国籍なステージだなと感じていた。

 

 ゲストとして、今日再びの瑶山百灵(from YonderVoice)が登場。ゲストを迎えた3人で「花歌留多」。1曲目に続いてのユーロビートを、サビのパワフルなユニゾンを始めとして3人で歌っていく。

 MCでは、かわいい女の子が2人で世間話をする。その光景は、(分かってくれる諸兄に向けて言うのなら)petit miladyとか、やまとなでしこに近いのかもしれない。難しい言葉でいうと百合である。

 バックハグした状態からスタートした曲は「红线(Chinese ver。)」。亡き王女の為のセプテットを原曲としたレミ咲曲だ。振り付けも、女と女の感情をふんだんに表現したものになっている。具体的には手をつないでくるっと回ったり、小指を掲げてたり、後ろから抱きしめてたりしてた。難しい言葉でいうと百合だ。

 bunny rhyTHmの印象は、ストレートなアイドルであるというものだった。東方アレンジサークルで、ここまで真芯のアイドルライクなパフォーマンスをするサークルは少なかった。やっぱりアイドルって良いものだなと実感させてくれた。

 

 フロアが一体となり、青いサイリウムがウェーブする。そんな幻想的な光景から始まる、「歌于绯想、剑问真情」。天衣無縫を原曲とした荘厳なアレンジだ。先程までのアッパーな曲から変わり、全中国語詞の唄と、ゆるやかな曲調、そしてストリングスが僕らを幻想郷へと誘う。

 

kiRa☆rhyTHm (Chinese ver.)ーhttps://www.bilibili.com/video/av42910617/

 幻想郷にたどり着いた僕らを出迎えるのは「kiRa☆rhyTHm (Chinese ver.)」8月にリリースされた新曲だ。光の三妖精の可愛さをめいっぱい表現した、年中夢中の好奇心アレンジ。bunny rhyTHmの可愛さも、めいっぱい僕らに魅せてくれる。フロアは楽しくクラップしたり、サビでは振りコピしたりと、ハッピーな空間になった。

 みんなで一緒に、明るく楽しいライブを作りあげた。そんなbunny rhyTHmの素敵なステージを、日本でも見れたら良いなと思った。今後の活躍も楽しみだ。

 

12年間の時と国境を超えた、世界の“Bad Apple!!“ ー 5th.「Alstroemeria Records」

 次は、上海初上陸となるAlstroemeria Records

 DJ.Masayoshi Minoshimaと博麗霊夢の衣装を纏ったVo.ayameがスタンバイしての1曲目、「REDSOUL」.ayameが「予め覚えてきた!」という中国語でフロアを煽る。そのパワーを受け取った会場中がJump,Jump,Jump!! 上海をパーティルームにしていく。

 

 そして2曲目、シックな黒いドレスのVo.nomicoにバトンタッチして「Alice Maestera」。

 フロアではすでにクラップが自然発生している。クラブミュージックが、そのビートが、自然と人を動かすということのは、世界共通らしい.
アルレコの代表曲、いわゆる“アンセム”に、フロアの声が大きくなる。こういう時、どういう声を上げるんだろうと思っていたら「オイ!!」だった。感情が昂ったときの言葉は、ここでも一緒なんだ。

 2007年に日本で創られた曲で、2019年に中国上海で盛り上がる。そんなこと、誰が想像していただろうか。

 

 MCでは「アルレコ初めて見る人~?」と質問するが、うまくフロアに伝わらない。すると2階席から大声で「第一次见到的!!」と、その場で同時通訳が。あらためてMCが「第一次见到的」と呼びかけると、会場から赤いサイリウム持ってたくさんの手が挙がる。続けて「私たちのこと大好き~?」と訊くと、もちろん日本語で「大好き!!」の大合唱。上海のファンがアルレコを待ち望んでいたことが伝わってくる。

 

(XFD:【3:47】Tt.06 SACRIFICE(REFIX)、【4:33】Tr.07 ARROW RAIN(REFIX))

 もう1度Vo.ayameにチェンジして「ARROW RAIN」。続けて「SACRIFICE」。ハードコアナンバーのこの曲は、どちらもブレイクダウン時の盛り上がりが特徴的だ。日本のクラブでドロップされるときは、フロア中が頭を振り、手を振り、体を揺らし、はちゃめちゃになるのがお決まりだ。

 でも上海ではどうだろうか・・・・もうはちゃめちゃだ!

 

 そしてDJ.Minoshimaは誰もが知る、あのイントロを細かくリピートさせていく。そう「Bad Apple!! feat. nomico」だ。中国ではBiliBili動画を通じて、日本のニコニコ動画カルチャーが浸透している。そんなわけで、みんなが大好きな「Bad Apple!! feat.nomico」は中国のみんなも大好きだ。

 イントロ中にVo.nomicoがステージイン。Vo.ayameはそのままステージに残り、ダンサーに。

 1番のAメロから会場中のシンガロングが飛び交う。

 

 2番に入るとDJMinoshimaは曲のボリュームを落としていき、ついにはゼロにする。それはMasayoshi Minoshimaの挑発だ。フロアに向かって「お前らはこのあとの歌詞を知ってるか、歌えるか?」という問いかけなのだ。もちろん、できなければ曲が破綻してしまう。

 “私のことを 言いたいならば 言葉にするのなら”

 ついにその時が来る。中国の、上海のみんなは歌ってくれるだろうか。

 

 

“““ロクデナシ”””

 

 

 美しいシンガロングだった。今日ここまでのステージで、中国の人が日本のファンと同じように東方アレンジを好きでいてくれていることはなんとなく感じていた。そして、このシンガロングで確信した。

 ありきたりな言葉だけど、好きなものに国境はないし言葉の壁もない。それを教えてくれたステージ、そしてフロアだった。

 

 

10年間分の大好きな大好きな、二次創作へのリスペクト ー 6th.「Yonder Voice」


 セーラー服verの東風谷早苗の姿で登場した、Vo.瑶山百霊

 「绝景エピローグ」でステージがスタートする。
 実は、この曲は鳥居すみ先生によるニ次創作同人誌「魔法世紀の少年少女」の、三次創作として作られた曲だ。それに合わせて、スクリーンにも鳥居すみ先生によるジャケットが映されている。同人誌の紹介はソムリエに任せよう(下記のリンクを参照してほしい)。

【同人誌特別掲載】魔法世紀の少年少女

 

同人ソムリエ#13「新作撮り下ろし!秘封特集に合わせて、秘封同人誌をご紹介 その②」

 

 この曲は、漫画のアフターストーリーを、“魔術師”メリーの視点から歌ったものだ.そうか、この結末を「絶景」と表現するのか.なんて美しいんだろう.「砕ける瞬間ときがやがて来ても怖くない」,「鳴り始めた終末おわりの鐘に微笑み合おう 繋いだ手だけは離さない最後まで」など、秘封倶楽部が好きな人ならたまらないフレーズが満載だ.

 僕が好きな秘封倶楽部がこの曲には詰まってて、そんな曲で上海のフロアが盛り上がることがとびきり嬉しくて、ああ、きみたちも”秘封倶楽部”が好きなんだなぁ、とこの頃の僕には、勝手に友達意識が生まれて始めていた.

 

 次は「蒼月の懺悔詩~Universal Nemesis」。この曲も実は、EastNewSoundの東方アレンジ「緋色月下、狂咲ノ絶」のリスペクトソングとして作られた曲。もちろん原曲はU.N.オーエンは彼女なのか?。

 

 瑶山百霊は、中国のサブカルチャーを代表するボーカリストであり、代表を務めるYonder Voiceには約10年の長い歴史がある。その中には人気の高い曲も多くある、今日、この日のライブで歌いたい曲だって、収まりきれないほどあるはずだ。

 それなのにも関わらず、自分の出番の半分を、日本サークルの“自分の好きな”2次創作へのリスペクトに費やしている。彼女が作ったそのセットリストの意味を、僕は自分の心に刻むように、全力で拳を振っていた。

 

  3曲目は「gone with」。2019年の10月にリリースされた、ライブ当時の最新作となる。今日の瑶山百霊の姿は、スクリーンに映された(このYoutubeクロスフェードにも使われている)この曲のジャケットと同じである。

 サビは原曲の音程と同じであり、極めて音程が高い。歌いきることはとても難しいはずだが、瑶山百霊の高音域の太刀筋は、それを物ともしない。

 

 Yonder Voiceのライブでは定番曲となる「花月夜」で出番を締める。酒を酌み交わす席の楽しさと寂しさを歌うこの曲。ライブという宴になんとぴったりだろうか。この時間を惜しむように、全てを出し切るように歌っていく。もちろんフロアもそれに応え全てを出し切った。

 

 

「うたかた」―日本のファンが知らない、”彼らだけの”感情 ー 7th.豚乙女

 ライブはまだまだ終わらない。残るサークルはあと一つ。幕間をつなぐMCが呼び込む前から、フロアからどこからともなくその名を呼ぶ声が聞こえてくる。

 その求めに応えてメンバーがステージイン。ステージ左からKey.パプリカ、Vo.ランコ、Paf.ランコの姉、Ba.コンプがスタンバイする。

 まずは「幻想のサテライト」、続いて「狂愛」、そして休み無く「ソリッド」。のっけから最高速をぶつける豚乙女にフロアも負けていない。

 「狂愛」は2009年に発表された豚乙女の東方アレンジ第1号だ。もちろん古い曲ではあるのだが、当然のように盛り上がる。そう、こいつらは豚乙女の始まりを知っている。
 「ソリッド」のリリースは2018年、最近のライブの定番曲。そんな新しい曲でも、彼らは盛り上がる。そう、こいつらは豚乙女の今も知っているんだ。

 

 

 次の曲のイントロが始まると、会場の空気が一変した。

 僕はこれまで、いろんなジャンルの、たくさんのサークルのライブを観てきた。だから、それなりにライブとかフロアについての表現には自負があった。
 でも、僕は、このフロアを表現できない。それがとても悔しいし、とても申し訳ない。とにかく初めて見るフロアだったんだ。

 ああ、ずるいや.僕は今まで、日本のフロアと”一緒”だと、友達だと、思っていたのに.彼らには”彼らだけ”の豚乙女への感情があったんだ.どうしてこの曲が好きなのか、どれだけ好きなのか語ってほしい、教えてほしい.だってそこに僕の知らない豚乙女とファンとの関係性があったのだから.

 

演奏されたその曲は、「うたかた」

 

 この曲は中国で圧倒的な人気がある。

 しかし、ライブで演奏される機会は殆どなかった(事実、このライブ以前にはピアノ+ボーカルで1度演奏されたのみだ)。だから半ば諦める気持ちがあったのかもしれない。でもやっぱり生で聴きたい。そんな夢とも言える願いを中国のファンは持ち続けていた。

 彼らが今聴いているものは、生で演奏される、「うたかた」だ。

 そんなフロアの想いを受け豚乙女もありったけをぶつける。

 アウトロでVo.ランコはその場にへたりと座り込んだ。これが全力を尽くすということなんだ、魂をぶつけるということなんだ。曲が終わると、Vo.ランコは胸に手を当てて一礼、そしてもう一度深く礼をした。それはこの曲を、そして豚乙女を好きでいてくれていることへの敬愛だった。

 

 Ba.コンプが、この日ラストの曲である「囲い無き世は一期の月影」の曲フリをした後に、日本は好きですか?東方は好きですか?とフロアに呼びかける。フロアはおっきな声で大好き!と叫び返して来る。

 あぁ。僕も同じだ。僕もWePlayやこのライブを通じて中国のことが大好きになったし、中国のファンに負けないくらい東方が好きだ。

 最後には会場の歓声とともに“上海の夜には唄謡い”と歌い、今日のライブを終えた。。。

 

 

 

今、このフロアに居る彼らの人生が変わったんだなとわかった。 ー Encore

 終えた。。。ように見えたが、「まだまだ足りない!」と言わんばかりにアンコールの大合唱。それに応え、コンプが再登場。そして今日出演者全員をステージに呼び込む。

 アンコールの曲は出演者全員での「Bad Apple!!(feat.魅知的幻想歌謡会)」だ!

 東京アクティブNEETsのDr.ショボン、Ba.蒼井刹那がリズムを刻み、Sa.山石本薫がメロディを乗せる。そして全サークルのボーカル陣がバトンを渡しながら歌っていく、今日だけのスペシャルなステージだ。豪華という言葉では足りない。夢みたいなステージが目の前で輝いている。

 

 みんな信じられるか?中国の、日本のサークルが、中国の、日本のファンがみんなで1つの曲を歌っているんだぜ?。

 

 東方ファンは間違いなくこの曲で繋がっている。それはきっとこの曲だけでは、なし得てないかもしれない。

 ZUNさんが原曲をつくって、

 Masayoshi Minoshimaがこのアレンジを作って、

 nomicoさんが歌って、

 それを多くのファンが聴いて、

 そうしてPVの“最高”のラフを上げたやつが居て、

 そのラフを“最高”の影絵PVに作り上げたやつがいて、

 それをまたファンがいっぱい見て、

 生のりんごで表現したり、

 和楽器で演奏するやつらがいたりして、

 

 たくさんの3〜4次創作を作るみんながいて。

 

 

 ああ懐かしい。俺、Bad Apple!!影絵の動画が何週連続ランキング1位になるか見守ってたんだよな、あの頃。

 あの時、祭りに参加してたみんな見てるか?

 みんなが、今、中国の東方ファンと日本の東方ファンを繋いでいるんだ。ほんとに、ありがとう。

 

 こんなにすごいステージを魅せられたら、きっとこの先、音楽に夢中になってしまうに違いない。今、このフロアに居る彼らの人生が変わったんだなとわかった。

 

 君は人生を変えるライブに出会ったことはあるか?僕にとってそれは「Flowering Night 2012」だった。

 

 今日、この場に居た彼らにとってそれは、この「魅知的幻想歌謡会」なのだ。

 

(引用:魅知幻想之旅@weibo)

 

 

これは、彼らの人生を変えるライブなんだ。 2019年上海開催東方ライブ「魅知的幻想歌謡会」レポート(後編) おわり