トラックメイカー・チバニャン×ビートまりお×IOSYSまろん鼎談――チバニャンは東方アレンジの扉を開くのか?

トラックメイカー・チバニャン×ビートまりお×IOSYSまろん鼎談【中編】

 COOL&CREATE・ビートまりお氏と、IOSYS・まろん氏、そして大人気アーティスト集団「レペゼン地球」チバニャン氏の鼎談連載。チバニャン氏、実は東方育ちのひとり。音楽の道に進むきっかけにもなった東方Projectとの出会いなどについて前回の記事で伺いました。

 中編はビートまりお氏、まろん氏、チバニャン氏それぞれの音楽二次創作論、そして気になる「チバニャン氏は東方アレンジの扉を開くのか」についても語られます。記事後半にはみなさんでの「お絵描きタイム」も! 最後までお楽しみください。

ZUNさんと握手できたら一生手ェ洗わない(チバニャン)

――第1回ではまろんさんとチバニャンさんが東方にハマるまでの経緯を話してくださいましたが、同世代で同じ時期に原作を入り口にハマったおふたりであるものの、まろんさんは現場に足を運び、チバニャンさんは動画と音楽にのめり込んでいったという、辿るコースが違っているところも、様々なジャンルで発達している東方Projectらしいなと。 

ビートまりお:
 チバニャンさんは上京後もコミケとか例大祭とか行ったことないの?

チバニャン:
 それが1回もないんですよ。

ビートまりお:
 興味がないの?

チバニャン:
 めっちゃありますよ! 去年行こうと思ったらライブで行けなくて! まじコミケ運めっちゃ悪くて、いつも仕事入るんですよ。今年こそ行こうと思ったら中止だし……ひどくないっすか!? 来年こそ参加します!

ビートまりお:
 チバニャンさんがサークルとして参加すればいいじゃん。

チバニャン:
 ……あんまり仕組みわかってないんですけど、1個のテナント借りるのにいくらくらいかかるんですか?

一同:
 
テナント!(笑)

ビートまりお:
 商業の人の考え方だ(笑)。

チバニャン:
 来年は行きたいなあ。コミケや例大祭を見ずして東方のすべてを語っちゃいけないと思うんすよ。東方の話をするたびに、「行かなきゃ!」という罪悪感に駆られてるんです。「現地に足を運ばずになに豪語してんだコノヤロー」みたいな。

ビートまりお:
 一度「上海アリス幻樂団」のスペースに並んでほしいなあ。ZUNさんから手渡しで受け取ってほしい。

チバニャン:
 マジっすか、そんなことできるんすか!? 握手できるんですか!? 握手できたら一生手ェ洗わないっすよ!

一同:
 あはははは!

チバニャン:
 東方の文化っていいですよね。「好きに二次創作していいよ」なんて、僕だったら絶対言えないですもん(笑)。本当に心の広い方なんでしょうね。

――先ほど、まりおさんはチバニャンさんの作る楽曲を褒めてらっしゃいましたが、どんなところが魅力的でしたか?

ビートまりお:
 「ニコニコ動画全盛期のIOSYS」を感じたんですよ。その頃のIOSYSの楽曲って、インターネット――当時は2ちゃんねるが多かったけど――のネタをがんがん取り込んでたと思うんですよ。ネットミームをすぐ作るというか、批判がありながらも面白いことをどんどんやっていた。レペゼン地球を聴いた時に「Twitterのネタになっているものをすぐに取り入れて曲にしてるんだ、昔のIOSYSみてえだ!」って。 

チバニャン:
 へえ~! めっちゃうれしいです。「イイ波のってん☆NIGHT」とかも、(「イイ波乗ってんねえ」ってワードが)ちょっと流行り始めたところにいち早く曲にしてしまえば、あたかも自分が考えたことのようにできるという!(笑)

ビートまりお&まろん:
 あはははは!

チバニャン:
 それってすごく大事だと思うんです。どんなかたちでもいいから曲をばんばん出しまくって――今の世の中って、数打ったうちの1個でも当たれば勝ちじゃないですか? だから最初は「曲は質より量で攻めよう」という作戦でしたね。だからお酒のコールや、日常で使えそうなことを曲にする機会がすごく多くなったんだと思います。「バスターコール」とか、溢れてるものをがんがん突っ込んでできてる(笑)。

ビートまりお:
 「えーりん! えーりん!」も、もともと「おっぱい! おっぱい!」っていうのを元に曲にしたら「ビートまりおがやり始めた」って空気になって――実際そんなことないんだけど(笑)。だからレペゼンにはその匂いを感じるんですよね。電波感というか。

チバニャン:
 曲における庶民性って、すごく大事だと思うんですよ。みんなが知ってるものを曲にすると、みんな取っつきやすいですよね。そういうのを積極的に取り入れるのは大事だと感じますね。

ビートまりお:
 まろんくんと「レペゼンっぽい曲やろう」と話して曲を作ったって言いましたけど、「そのうち本人に届けばいいね。まあでも届くわけないよね」って感じだったんです。でもIOSYSの「チルノのパーフェクトさんすう教室」のリミックス企画が出た時に、まろんくんに「『O2MEN』でやりたい!」とごり押しして(笑)。まろんくんは元ネタっぽく作ることはするんだけど、まんま似せることはしないんですよ。

まろん:
 ああ、やらないですね(笑)。

ビートまりお:
 だから「もっと原曲こうじゃん!」ってレペゼンに寄せるんですよ(笑)。

まろん:
 「そこまで寄せていいの!?」って思いながらできるのがアレです(笑)。「チルノのパーフェクトさんすう教室」が「おてんば恋娘」の二次創作なのに、それでいて「O2MEN」の二次創作って意味わからないですよね!(笑)

ビートまりお:
 でも俺はもともと「ラクトガール ~ 少女密室」とBUMP OF CHICKENを合体させたりしてたから。楽しいなーと思いながらやってるし。

――「ラクト・ガール」ですね。当時J-ROCK好きの間でもかなり話題になり、わたしもそれを聴いて原曲に興味を持ったのが東方の入り口でした。少年時代のチバニャンさんには、まりおさんの活動はどのように映っていましたか? 

チバニャン:
 「最終鬼畜妹フランドール・S」とかを聴いて「自由な人がいるな~」って思いました(笑)。荒れ散らかしてるな~って。そもそもの出会いは、塾の友達が「まじいい曲だから聴いてみて!」ってPSPに入ってる「ナイト・オブ・ナイツ」を聴かせてくれて、「めっちゃいい曲じゃん!」って思ったとき。そこでビートまりおさんを知りました。

まろん:
 東方って、仲間同士で教え合って広まっていく傾向にありますよね。まりおさんきっかけで石鹸屋さんや岸田教団さんも知ったし……。あと、いま話題に出た「最終鬼畜妹フランドール・S」ですけど、イントロがCAVEさんのシューティングゲーム『ケツイ』のリスペクトなんですよね。東方を知ったあとに、ZUNさんがCAVEシューや『式神の城』、『ティンクルスタースプライツ』のオマージュを取り入れていることを知ってゲーセンでプレイするようになって。だからそのあとに「最終鬼畜~」聴いて「これ『ケツイ』のやつじゃん!」って。それまで「歌のお兄さん」のイメージが強かったんですけど、そこでまりおさんのインストもめちゃくちゃ好きになりました。東方アレンジはそういうオマージュができるのもいいですよね。音楽で遊ぶという感覚があって。

ビートまりお:
 同人シーンで活動してたから、いろんなパロディをずっとやってきてて。でもそういうのが本人に届くのはあんまり良くない……というかグレーなんだけど、最近は「あ、あのパロディをしてる人ですね!」と原作者サイドの方に言ってもらうことが増えてきて。そこからいろいろお仕事をいただくようになって、自由に同人やってきてもこんなふうにつながるんだなと。

 そもそも東方アレンジの場合は、ZUNさんの曲を聴いて、「この弾幕に音楽をつけるなら、もっと激しい音楽にしてえわ!」ってところなので、「最終鬼畜妹フランドール・S」もそういうマインドでアレンジを作ってるんですよ。あと、俺はけっきょくああいうビートまりおビートまりおした曲しか作れないから、これで作り続けてる感じですね。出来ることが少なかったことが、ビートまりおの武器になっている――これを俺は「カリスマ的マンネリズム」と呼んでいます(笑)。 

一同:
 (笑)。

ビートまりお:
 同じことを続けている人は、それがその人のカラーになるじゃないですか。ZUNさんもトランペットを使い続けてるから「ZUNペット」と呼ばれるようになったわけだし。

チバニャン:
 そういうふうに「○○っぽい」と言われることって、すごく大事ですよね。なかなか出そうと思っても出せないし。 

――それを原曲のある「アレンジ」でやるところも異端だなと。 

ビートまりお:
 もともと音楽を始めたのも二次創作が入口なので、オリジナルでやるという頭がなかったんですよ。だからアレンジを考えることで「メロディをこうしてみよう」と思いついたりして、それがあったからこそビートまりおっぽさを見つけたところはありますね。それが楽しくてずーっとやってる。何も考えずにやってたら、東方がどんどんすげえ大きくなってたんですよね。

 だから、十数年前のアニサマで東方アレンジサークルが何回か出たときも、驚きというよりは「やっぱりなあ」って感じでしたね。これだけ多くの人が東方に対して熱量を持っていたら、当然のムーブメントだよなと思います。そのなかのひとりに俺がいただけのことなんです。今は10代の女子のファンもたくさんいて、新しい世代が入ってくることでまたみんなで大きくなっていくんだろうなと思いますね。

チバニャンさんも粗品さんも、オタク文化を好きなわけがない層の人たち(ビートまりお)

――まろんさんは東方アレンジを考えるとき、どんなスタンスでしょう?

まろん:
 僕は「恩返し」ですね。東方カルチャーへの。

 というのも、中3くらいのころにZUNさんが東大の駒場キャンパスでおこなった講演を聞きに行ったんですよ。その時に「東方アレンジが流行ってますけど、ご自分の楽曲のアレンジは作らないんですか?」という質問が出て、ZUNさんは「過去の曲をアレンジするより、新しい曲を作ったほうが早いし楽しいじゃん?」とおっしゃってたんですよね。それを聞いて僕は「なるほど!」と思ったんです。

 そこで東方アレンジを作りたい熱が一旦落ち着いて、オリジナルを作るようになって。そこからいろいろ経てARMさんにお誘いいただいて、IOSYSに加入して。改めて東方アレンジについて考えた時、「僕は東方アレンジに育てられてここに居るから、アレンジをやるからにはアレンジ文化に恩返しをしよう」と、思うようになったんです。

まろん氏

 ――素敵な話ですね。中学時代には憧れだったアレンジ制作が、いまは恩返しになっている。

まろん:
 大好きなジャンルすぎるので、好きなぶん筆が遅いのが難点で……。IOSYS入っていちばん最初にアレンジを作ったとき、曲が選べなさすぎて10曲くらい入れたミュージカル仕立ての8分尺のものを作りました(笑)。やっぱり下手なものは作れないですよね……。 

――チバニャンさんも「東方アレンジしたいけど選曲に半年かかりそう」とツイートされていましたが。

チバニャン:
 まろんくんと同じで、下手なものは作れないですよね。がっかりさせたくないじゃないですか。やるからには優勝したいんすよ! 「やっぱチバすげえ」と思われるのがいちばん気持ちいいんで。好きな曲が多すぎるんですよねー……。選曲にはまだまだかかりそうだし、レペゼンが落ち着いたらやろうかなと。絶対東方アレンジ作るって決めてるんで。 

一同:
 おお~。

チバニャン:
 今の技術でどこまで東方アレンジを面白くできるのかな? という興味もあるし、東方シーンが盛り上がることは僕にとってもすごくうれしいことなんですよ。そのためにもまず自分自身の知名度を上げることを優先したいんです。そういうタイミングになったら東方アレンジやりたいですね。 

ビートまりお:
 それこそ霜降り明星の粗品さんみたいな感じだよね。知名度がかなり高まったタイミングでボカロ曲を発表してさ。 

チバニャン:
 そうっすね! あの人もすげえ東方好きで。だいぶオタク気質だと思います(笑)。

「感動するシューティングゲームっていうのは中々無い。ZUNさんには本当に、健康に気をつけて欲しい」霜降り明星・粗品 ショートインタビュー

ビートまりお:
 それこそ10年15年前には考えられないことなんだよね。当時の常識で言うと、チバニャンさんも粗品さんも、オタク文化を好きなわけがない層の人たちなんですよ。でもそういう人たちが「東方が好き」と言っている。それこそ、チバニャンさんのファンのお姉さま方が俺のことを「あ、えーりんの人じゃん」って言っていて、ものすごくびっくりして。すげえ感動しました。それだけ東方も一般化してきたのかなと、すごくうれしいですね。

 昔東方を好きだった人があちこちに散らばってる。もっともっと面白い広がり方をしていくんだろうなと思ってます。だから早くチバニャンさんに東方アレンジを作ってほしい! 

チバニャン:
 だからちょっと待っててください。絶対やるんで! 僕がいちばん聴きたいですもん!(笑) まじ選曲ミスりたくないっすね。「だろうな」ってところでいきたくない。「チバさん……!! そこ行ったんすか!?」みたいなの、ちょっと欲しいっすね(笑)。 

――先になればなるほど期待値も上がるでしょうし。

チバニャン:
 いいですねえ。勝手に期待しといてくださいって感じっす!(笑) 

一同:
 あはははは! 

チバニャン:
 期待されたらもう勝ちっすからね! それこそ「仙道がなんとかしてくれる」じゃないっすか(笑)。まだ慌てるような時間じゃないっすよ! 

――(笑)。それ以外に東方関連でやってみたいことはありますか?

チバニャン:
 あー……絵ぇうまくなりたいっす! ZUNさんって音楽、ゲーム、絵、ストーリー……全部5段階の5取ってますよね! やばくないっすか!? ZUNさん人間じゃない説ありますよね! 絵ぇうまい人の存在が不思議なので、絵が描けることに興味があるっていうか。 

ビートまりお:
 じゃあチバニャンさんなんか東方のキャラ描いてみてよ。紙とペンある?

――ではみなさんでお絵描きタイムということで。チバニャンさんがいちばん好きなキャラクターにしましょうか。

チバニャン:
 射命丸っすね。 

ビートまりお:
 描けねーよ!(笑) ふさふさがついてることしか覚えてない!(笑) 

まろん:
 あれ? 射命丸ってどんな感じだったかな……。(自分が描いた絵を見ながら)こんなの射命丸じゃない! 

チバニャン:
 あ、やべえ! こんな絵晒したらフォロワー減りそう!(笑) 僕のいとこが絵師なんですけど、まじで引くほどうまいんです。 

ビートまりお:
 俺ももともと音楽を作る前はイラストレーターを目指してて。絵を描いてホームページに載せてたんですよ。 

一同:
 へえ~! 

(~3分後~)

――ではまずまろんさんから。

 

チバニャン:
 え~!! 超うまいじゃないっすか!!

まろん:
 卓球ラケット持ってるみたいですけど(笑)。 

ビートまりお:
 あ、もっと髪の毛長かったか……足しとこ。 

まろん:
 あ、まりおさんずるい!(笑) 出してください! 

ビートまりお:
 ごちゃごちゃさせて誤魔化したわ(笑)。

まろん:
 あー! ぼんぼんはそこか~! 

チバニャン:
 ……絵ぇ描きながら思ったんすけど、やっぱ俺音楽で良かったっすわ(笑)。

ビートまりお:
 かわいい! 

チバニャン:
 帽子のぼんぼんの再現性は高くないっすか? でもまりおさんよく全身描けましたね。すげえ~。 

――みなさん可愛らしい仕上がりで。 

まろん:
 東方ハマると、ZUNさんに感化されてまずちょっとひと通りやってみようと思ったりしますよね。絵を描いてみたり、プログラミングを勉強してみたり、音楽を作ろうとしたり。ドット絵を描こうとしたこともあります。 

ビートまりお:
 こんな絵でも文ちゃんだってわかるじゃん? それはZUNさんのキャラデザの凄さだよね。

 

 音楽の二次創作論からお絵描きタイムにまで発展し、最終的にチバニャン氏の発言「ZUNさんって音楽、ゲーム、絵、ストーリー……全部5段階の5取ってますよね!」を解説する形となった中編。明日公開となる最終回の後編は、DTMの面白さとみなさんの曲作りを中心に伺います。お楽しみに!

 

「25時間東方ステーション ~ 東の国の眠らないテレビ」
音楽バラエティコーナー「抹JAM」(8/23(日)午前1時〜)にチバニャンさん、まろんさん出演

トラックメイカー・チバニャン×ビートまりお×IOSYSまろん鼎談――チバニャンは東方アレンジの扉を開くのか? おわり